プリンス堀潤 のそもそもキーワード«2015年6月号より»

憲法改正 ・後編
ぼくらの自由 は誰 のもの?

新学期が始まり、1カ月が経ちましたね。みなさんのクラスではいじめや争いごともなく、穏やかに毎日を過ごせていますか? 今回はぼくの子ども時代の体験から、「憲法12条」のお話をしましょう。
ぼくは小中学生のとき、転校が多くて関西と関東の学校を行ったり来たりしていました。言葉や制服などちょっとした違いをばかにされたり、笑われたり、無視されたり。毎朝学校に行くのがしんどくて、通学の途中で、何度も自分の家のほうを振り返って「行きたくないな」とため息をついたのを、今でも強烈に覚えています。
でも、なんとか通い切れたのは、いじめられていても一人か二人、必ず味方になってくれる友人たちがいてくれたから。「ぼくのことを考えてくれているんだ」「一人じゃないんだ」と思えることが、負けそうになる心を奮い立たせてくれました。
でも、なんとか通い切れたのは、いじめられていても一人か二人、必ず味方になってくれる友人たちがいてくれたから。「ぼくのことを考えてくれているんだ」「一人じゃないんだ」と思えることが、負けそうになる心を奮い立たせてくれました。
これは「ぼくが自由で幸せになる権利を、ぼくの友人たちが守ってくれた」といえます。実はこうした考え方は、すでに日本国憲法第3章《国民の権利及び義務》の12条に、みなさんが普段から努力して実行していかなくてはいけないものとして書かれています。そして、私たちの自由や権利は、私たち一人ひとりが絶え間なく努力して守るもので、それは《公共の福祉》のために使われるべきものとされています。
ここで一つ、《公共の福祉》という言葉が出てきました。下のイラストを見てください。《公共》とは人々の暮らしがおりなす社会を意味し、《福祉》とは「幸せ」や「豊かさ」を意味する言葉です。
つまり、12条は「私たちの自由や権利はあなたの周りにいる人が幸せになるために使いましょう」と明記しています。小中学生時代、いじめを受けていたぼくを救ってくれた友人たちは、まさに公共の福祉のために、自分の力を使ってくれたんだなと、今にして思います。
ここで一つ、《公共の福祉》という言葉が出てきました。下のイラストを見てください。《公共》とは人々の暮らしがおりなす社会を意味し、《福祉》とは「幸せ」や「豊かさ」を意味する言葉です。
つまり、12条は「私たちの自由や権利はあなたの周りにいる人が幸せになるために使いましょう」と明記しています。小中学生時代、いじめを受けていたぼくを救ってくれた友人たちは、まさに公共の福祉のために、自分の力を使ってくれたんだなと、今にして思います。
しかし一方で、憲法改正を目指している自民党では「《公共の福祉》というのはあいまいな表現で、具体的に何をするのかわかりにくいので、《公益及び公の秩序》という言葉を使いましょう」という案が出され、議論が始まろうとしています。《公益》とは人々にとっての利益を指し、《秩序》とは順序や決まりを意味します。つまり、「互いの利益やルールを守ろう」と書き換える提案です。
さて、憲法をこのように変えていくことによって、社会はどのように変わるのでしょうか? ぜひみなさんがそれぞれで、未来を想像しながら議論をしてみてください。
さて、憲法をこのように変えていくことによって、社会はどのように変わるのでしょうか? ぜひみなさんがそれぞれで、未来を想像しながら議論をしてみてください。
公共の福祉って?
日本国憲法では、国民の誰もが自由な環境で勉強したり、働いたりして幸せになれるように《基本的人権》を尊重するよう国に求めています。その一方で、第3章12条の原文では《この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。》と記されています。

公益及び公の秩序って?
法律の専門家からは、「秩序(=ルール)を、誰が決めるのかがわからない」「国が決める場合、本来は国を監視するはずの憲法が、国民の行動を縛ることになってしまう」として、じっくり議論すべきという声があがっています。

確かに《公共の福祉》はあいまいな表現ですが、「ぼくらの自由はぼくらが決める」社会にほかなりません。《公益及び公の秩序》が意味する「互いの利益や誰かが決めたルールに縛られる」社会とは、基本的な性格が違います
- 「公共の福祉」とは、みんなの周りにいる人たちの幸せのこと
- 「公益及び公の秩序」では、誰がルールを決めるのかわからない
- そもそも憲法は国を監視するもので、国民を縛るものではない
堀潤 プロフィル
1977年 、兵庫県 生 まれ。ジャーナリスト、市民投稿型 ニュースサイト「8bit News 」代表 。「モーニングCROSS (TOKYO MX )」「JAM THE WORLD (J-WAVE )」など、テレビやラジオの出演多数 。
1977年
イラスト いのうえしんぢ