あんぱんは、文明開化の味がする
1885年には、「元祖」チンドン屋(広目屋)が銀座を練り歩き、「焼き立て出来立てホクホクの木村屋パンを召し上がれ」と宣伝した
写真 銀座木村家
明治維新後、西洋文化が広まるとともに、パンも少しずつ普及し始めていた。そんな時代を読んで、パン屋を開業したのが、元下級武士の木村安兵衛だ。
日本人の口に合うパンを求めてパン職人と試行錯誤し続けて、1874年に生まれたのが、和洋折衷の酒種あんぱんだった。酒種を使って発酵させたパンは、独特の甘い香りがする。
翌75年、隅田川沿いの水戸藩下屋敷で行われた花見の会に酒種桜あんぱんが届けられ、明治天皇から「引き続き納めるように」とお言葉があった。これをきっかけに、一躍庶民の間でパンが親しまれるようになったそうだ。
奈良・吉野山の桜花の塩漬けをおへそに埋め込む酒種桜あんぱんは、今も変わらぬ人気を保っている。